舞妓の髪は地毛結いでしかも毎日は結い直さしまへんので、
寝るときは箱枕で寝ます。高枕と言う人もおられます。
箱枕云うんは時代劇などで見る箱の上に綿の入った布が付いてる高さのある枕どす。
仕込み期間もだいぶ進んで髪が伸びて来ると試しにいっぺん髪を結うてみよか~と云う事になり
割れしのぶに結うてもらい、その晩「練習やし今晩高枕で寝とうみ」とお母さんが言わはって
生まれて初めて箱枕で寝てみました。
あかん…寝られへん…慣れへんのと頭が気になるのと、
やっとウトウトしたらド~ンと枕から落ちて
目ぇ覚めて結局朝まで寝たんかどうか解らんまま過ごしてました。
枕から落ちる事を「おまくをはずす」と言うてました。
舞妓に出てからもうちは、しょっちゅう、おまくはずして、
鬢(びん・・・横髪の事)がグチャグチャになってしもて
髪結いさんのお師匠さんに「またおまくはずさはったな!」って、よう叱られてました。
大きい姉さんが言わはるには「今はおまくはずしても叱られるだけで
済むけど昔は枕の下におが屑が敷いてあったんぇ
髪にびんつけ油付いてるし、おが屑付いたら洗わな取れへん。大層な事やったんぇ
みんな、それがかなんしおまくはずさん様にならはったんぇ」との事どした。
おが屑とは木の削りカスで、うちら小さいじぶんは果物の箱やなんかに入ってましたなぁ
大きい姉さんの話はまだ続きます
「もっと昔はおまくの横に刃物置いてはったらしいぇ!
落ちたら首切れるし、おまくのお稽古も命がけやなぁ」
この話を聞いたうちは震えました。
昔に生まれんとほんまによかった。
ほんまの話か、うちがあんまり、おまくはずすし怖がらせはったんか…解らしまへんけど
ほな 又 おおきに