
八朔言うんは8月のおついたち(1日)の事で、
日頃から芸事でお世話になっているお師匠さんやお茶屋さんへご挨拶に廻る夏の行事ごとどす。
昔は花街だけやのうて農業なさってる方や武家やお公家さん、商家の家々でもされてたそうどすけど、
今では花街ぐらいしか残ってへんみたいどすなぁ。
祇園町さんでは夏の紋付の正装でご挨拶にまわられる様ですけど、
うちらの街では、からげと言う普通の夏のお着物でまわらせてもろてました。
同じ姉さんの系統のもん全員で日傘さして歩きますにゃけど、なんせ8月の1日どっしゃろ!
暑いてなもん違いますねん。
もう顔もいがみますわぁ。
そやけど一緒に歩いてはる芸妓さんの姉さんはそら涼しいお顔で歩いてはりますねん。
「何であんな涼し気なんやろ?」 「暑ないのかな?」
後から姉さんに聞いてみたら、
「暑い暑い言うても涼しなるわけやないし、口にしたり顔歪んでたら見てるもんも、よけ暑なるやろー」って言わはりました。
さすが!!と思いましたけど、そんでもやっぱり暑い。
屋形に戻ったら汗びっしょりでまるで行水したみたいになってましたわ。
芸妓さんや舞妓さんはなんぼ暑うても顔に汗かかへんのは、
着物を着るとき脇の下を紐できつう縛ってるしやとか言う噂がありますけど、
脇紐の真偽の程はどうや知りまへんけど、この姉さんの様に暑うても涼し気にしてはる(ホンマは暑うても…)って言うのも実はあるのんと違いまっしゃろか?
京都の夏は盆地の暑さでねっとり、じわじわ、ほんまにたまりまへん。
エアコンの無い時代みんな、どなしてはったんやろうと思いますわ。
そやからこそ、建具を夏の「葦障子(よししょうじ)」にしたり「簾(すだれ)」を掛けたり、
「網代(あじろ)」敷いたりとしつらえ替えの文化が根付いたのかも知れまへんなぁ。
毎年6月のおついたち(1日)になると屋形では「模様替え」と言うてたしつらえ替えをしてはりました。
今では、家でも6月になるとカレンダーに印をつけといて、置物やクッション、お布団等、
涼し気な物に変えては、夏のしつらえを楽しんでんのどっせ。
ほな 又 おおきに