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紅子

15.無言詣り


祇園祭の前祭りの巡行が終わったら祇園さんから3基の御神輿さんがお出ましになって四条寺町の御旅所に24日迄の1週間鎮座されます。

その1週間の内1日、1度に7回祇園さんと御旅所を往復してお詣りすると願いが叶うと言う、言い伝えがありまして、ただこのお詣りが

途中で誰にお目にかかっても声をかけたり、人さんから話しかけられても喋ったらあかんのどす。

最初に祇園さんにお詣りして、御旅所へお詣りします。これを7回繰り返すのどす。

最近は7日間毎日と言う情報もあるようどすけど、本来は1日に7度と言うんやった様な気ぃしますねん。

途中でうっかり喋ってしまうと又一からやり直し…無言詣りをするのんはたいがい、お座敷が終わってからどすし、一晩で7回のお詣りを

誰とも言葉を交わさず成し遂げるのんは難しおしたやろなぁー

そう言う、うちはいっぺんも無言詣りはした事おへんのどすけど川端康成先生の古都の中で別れ別れになった双子の苗子が

祇園祭の夜、御旅所でお詣りをしてはる場面が好きで、お座敷が終わってから、こっそり行ってみると、憧れの姉さんが

お詣りしてはる姿にはっと「無言詣りしてはるんや」と気づいて、見つからんよう物陰に隠れました。

幸いにも姉さんには気づかれず、そのまま四条大橋の方へ歩いて行かはりました。

何十年経った今でも、あの時の姉さんの真剣で美しい横顔を忘れることが出来しまへん。

祇園祭の時期になるとお囃子の音と共に、あの夜の姉さんの事を思い出すのんどす

どないしておいやすのやろうと…

ほな 又 おおきに

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